Rails の問題は Rails のベストプラクティスがフロントエンドのベストプラクティスの邪魔になるどころか全く逆方向で相反してる点です。DHHの思想がフロントエンドと根本的に逆行してる。そういう人が作るフレームワークなのでwebpackerの抽象化を根本的に間違ったりする。
— prev.js (@mizchi) December 1, 2020
昨日もリプライで少し書いたけど、DHH自体が直近のHeyの開発でも明確にJavaScriptというものを触れないようにすることを是としているような主張をしているので、DHH wayが色濃く反映される以上この状態はもう避けられない気がしている
— potato4d / Takuma HANATANI (@potato4d) December 1, 2020
Railsがフロントエンドの最先端をゆく人々1から良く思われないのは事実として。
View層においてJavaScriptのFrameworkもしくはコードの比重が増えていくとともに、バックエンドまで一気通貫で同じ言語を使用できればいいのにという思想からか、加えてRailsとモダンフロントエンドとの相性がよくないからか、Railsの出番は今後減っていくだろうという意見に対しての賛同が増えてきているのを感じている。
blitz-js prisma rails 倒し方 - zenn.dev/mizchi
実際のところ、HTMLがサーバーから返ってきて、ちょっとしたインタラクションがある、なんていうシンプルなWebアプリケーションの世界ならば、JavaScriptの存在は「塩」であれたかもしれない2。だが、例えば自分が関わったOOPartsだったり、Webブラウザ上でネイティブアプリケーションのようなリッチな体験を提供したいとなると、RailsはよくてJSONを返すAPI serverとしての立場でしか居られず、フロントでの資産をバックエンドでも使用したいという判断になった場合にはそもそもRubyの居場所が無くなってしまう。
そんなJavaScript優勢となりつつある昨今においてのRailsの優位点のひとつに、世界最強のORM3であるところのActiveRecordの存在が挙げられるが、それも前述の記事において触れられているPrismaの出来が良くなればひっくり返る。
RESTやActive Record patternとMVCの組み合わせ、CoCなどの先見性からRailsが優れていた時代はあるにせよ、それが永遠に続くとは限らない。仮にRailsが本当に使われなくなった時代が来たとして、別に自分はRailsと(言い方が悪いが)心中するつもりはないし、そんなつもりの人は世界に存在しないんじゃないか。そうならないように、みんなContributeしている。
では、Webの世界においてRailsが「レガシー」という世界になったとき、自分はどうすればいいだろうか。学生時代にRubyを触ったのが始まりとなって新卒でRailsを書き始め、そこからキャリアの大部分にRubyとRailsがしっかりと喰らい付いている自分は、Rubyに対してもRailsに対しても結構愛着がある。レガシーとなってほしくはない。採用され続ける選択肢であってほしい。
もちろん、Railsの仕事が消えることはない4。COBOLの仕事が消えないのと同様、既存のビジネスがRailsで回っているところは、余程のことがない限りはRailsを採用し続けるだろうし、他言語、他Frameworkに移行するとなってもRailsの経験は必要になる。何より、BasecampとHeyがそのビジネスを続けていく限りは、それに合わせてRails自体も進化し続けるだろうし、文字通りの「Railsの死」というものが来年のうちに来ることはないだろう5。しかし、では2年後は?3年後は?その先は?
Railsでは食べていけない、というのは何も仕事が無くなることのみを指しているのではなく、単価の面においても「上がらない」という状況も含む。昨今はプログラミングスクールがいくつも開設されている。その指導内容に玉石混淆はありつつも、良いスクールを卒業した方々はとても優秀で、自分の実力が追い越される日もそう遠くない。そうなったとき、市場原理からいっても、Railsが書ける、というスキルだけでは単価は伸び悩む。
自分の能力について、今後何について伸ばしていくべきなのかというのを考え直す必要がある6。今後需要が増えるスキルというのが何かを考えたとき、以下のものが挙げられるだろう。
ここから書くスキルについて、「そんなのもう主流な技術じゃないか、何周遅れの議論をしているんだお前は」という感想はぐうの音も出ないほど正しい。これは単純に、Railsでしか職を得てこなかった人間の切迫感を文章にしただけである。ここに挙げられている技術で手を動かすことができていなければ、今後は厳しいだろうという勝手な焦りであって、世の技術者全員がすべからくここに挙げた技術を使いこなせているべきだとは言っていない。
2018年の段階で私が知らないこと — Overreacted
まずはTypeScript。これは先程の文脈の通り。Webアプリケーションに関わる開発者なら、既に「書けないとまずい」という域になりつつあるだろう。では、具体的に「書けないとまずい」とはどのレベルを指して言うのだろう。自分は、既存のコードベースにおいて、軽いバグ修正や、Frameworkを使用したシンプルなWebサイト作成くらいはできる。しかし、それ以上のこと、例えばいくつかのライブラリを組み合せて0からWebアプリを構築するということが苦手だ、というかできない。TypeScriptという言語は特殊で、JavaScriptへと変換しなければ実行できないので、必然的にtscやそれら変換処理、bundleを担うwebpackなどのツール群、要はエコシステムへの深い理解も求められる。まあ、bundlingのことを考えるとTypeScriptがJavaScriptだろうが、あまり関係はない。エコシステムへの習熟だって、どんな言語においてもそうだろう。
次にGo。今やすっかり開発環境に欠かすことのできないDockerなどのコンテナ技術において、第一級市民言語であるところのGoは、実行ファイルが1バイナリに収まるdeployの手軽さ、M1 chipから始まるであろうArmプロセッサのシェア拡大という状況におけるクロスコンパイルの容易性、Rubyなどスクリプト言語と比較したときの実行速度からみても、API backendの実装言語としてさらにシェアが上昇していくことが予想できる。
自分にとってGoと似た立ち位置にRustが存在する。Rustに関しては、所有権などこれまでのプログラミングには出てこなかった概念が登場することから自分で勝手に壁をつくってしまっているところがあり、非常に良くない。
“Web” という領域で体験を追求していくなら、Service WorkerとWebAssemblyも見逃す訳にはいかない。WebAssemblyへコンパイルできる高級言語としても、Go/Rustはどちらかでも実戦で手を動かすことができるようになっていると助かるだろう。
言語に関係しないスキルとしては、設計がある。自分はClean Architectureを知らぬ。ActiveRecordに頼り、密結合したMVCばかり書いてきた。conventionに頼ってきたので、いざ自由に書くとなったときに指針が無く、途方に暮れることがままある。アプリケーション単体の設計についてもそうだし、大量のアクセス、大量のデータを捌くためのアーキテクチャというものについても知識が薄い。PofEAAを読み直す時期なのかもしれない。
そういう焦燥感があるので、PodcastのサイトをNext.jsで構築したりと、プライベートの時間はTypeScriptを書くことにしている。新しく触れる技術である程度の大きさのものを作ろうとすると、その技術について必要な知識のうち、自分に不足しているものがわかってくる。自分の場合、JavaScriptの場合はasync/awaitやPromiseが絡む、非同期処理が前提となった構造のコードが全然書けない。値を取得しようとしてはawaitを付け、しかしそこはasync functionではないというエラーが出る。こういうことを幾度となく繰り返している。Goの場合はgoroutineやchannel、contextについて全く無知である。存在は知っているが、どういうものか理解できていないし書けもしない。
フリーランスという立場上、技術についていけなくなり食い扶持を失うことを強く恐れている。別に社員時代にぬるま湯に漬かっていた訳ではなく、より一層その意識が強くなったというだけのこと。そんな中、自分が主戦場としている分野が、先駆者達からはいずれ避けるべきものになるという評価にあるということを知ると、反発したい気持ちになってしまうのは当然である。しかし、例えそれがポジショントークに過ぎず、新規事業においてはまだRailsが主選択肢たりえるとしても、一旦はその主張が正しいとしたときに自分はどういう方向に進むべきかというのを考えておきたい。これはその2020年末版。
エンジニアを仕事にしてるみんな、なにをモチベーションにして、なんのために仕事や勉強してるの?
— ダンボー田中📦 (@ktanaka117) December 9, 2020
書いている途中にこのツイートが目に入り、そういえばこの記事だと食べていけるかどうかしか気にしていなくて目的が不明確だなと思ったので自分のモチベーションについても少し書く。
自分のモチベーションは「自分が作りたいものを作れるようになりたい」で、そのために技術の幅を広げたり、仕事や勉強をしているつもりだ。ある「作りたいもの」が出てきたとき、それが実際に可能かどうかの判断、逆にある技術を知ったときに「こういう便利なものが作れるんじゃないか」という思考ができるようにしておきたい。そして実際に作れるようになりたい。
プライベートの時間に書いているというTypeScriptも、自分の日々の困り事を解決するためのアプリケーションを作成するのにJavaSctiptが適していて、ならばとTypeScriptで書いているという経緯がある。 フリーランスになってから若干、「仕事にできるかどうか」が判断基準に加わったかもしれないが、原動力は変わっていないと思っている。もちろんお金は欲しいが。
発言を引用した2人に共通する点として、「抱えているユーザー数が多い」というのがあることに書きながら気づいた。 ↩
RailsDM 2019における講演より。 https://togetter.com/li/1330578 JavaScriptは塩のようなものであるという意見。 ↩
誰かがそう言ってたような気がするんだけどソースが見つからなかった ↩
Railsしか書けないプログラマーのために社内にRailsプロジェクトが用意されているという「Railsが福利厚生」という状況になったら嫌だな、と思った。 ↩
とは言ったものの、DHHの考えがモダンフントエンドと乖離したままRailsが成長するのであれば、年々その開きは大きくなっていくだろうが。 ↩
いつだって考え直すべきだが? ↩